雨の日の楽しみ
雨。
外に出るのが億劫になってしまう、そんな天気。
どうしても外出しないといけないときは、極力屋根の下を歩くルート取りをするか、防水の靴で外出する、そのくらい、いつもより気合いを入れて外出していた。
しかも、防水の靴と言っても、たいして防御力が高いわけじゃない。ある程度歩いていたら靴先の隙間や、水がとんだ足首部分から濡れていってしまう。
正直、雨は苦手だった。
その日はいつも通り、雨の日モードで外出していた。残念ながら、ほとんど屋根がない住宅街を歩く必要があり、しっかり傘を差して早足で目的地に向かっていた。
気分が下向きだからか目線も下に、黙々と歩き用事を済ました。その帰り道、初めて来た場所で、さらに帰り道だったので、すっかり油断していた。
下を向きつつ歩いていたら、道に迷った。
ナビアプリで最寄りの駅まで5分程度と出たので安心し、ため息をつきつつ周りの景色を確認して歩こうと目線をあげたその時、それは目に入ってきた。
濃淡のある緑。
住宅街の壁やコンクリートの縁部分にくっついている、そう、多分コケ。
この道が特別コケが多いのか、初めて通った道だからわからないが、コケ、いつもより鮮やかな気がする。
コケってこんなに目立っただろうか。
あれ以外、コケが気になり道を歩いているときはチラチラ探すようになった。案外いる。
そして、やはり雨の日は緑が鮮やかになる気がする。薄い緑色のコケも雨の日はつややかで目立つ。緑にいろんな色彩があることを、コケに教えてもらった気分である。
雨の日のコケの魅力を知ったのか、雨が降ると傘を持ちつつ歩くのもいいな、と心境の変化が起こっている。なんだか緑の鮮やかなコケが見たい。
何がきっかけで、憂鬱が減って、楽しみが増えるかわからないもんだ。